心が宿るとか魂が宿るとか、言葉としては聞いたことがあるにしても、
はたして見たことがあるかと問われれば皆さんどうですか、
ウ~ムと唸ってしまうより仕方なかった私のこの愚かさよ!
それはきっと精密精巧な造りだとかの技術論などではきっとなく、
祖母が長年にわたり磨き続けた床柱の、あのしっとりとした鈍い光のようなもの(たぶん)。
兎に角。
今回はものづくりの原点に触れる、
あるいは、ほんの少し指先が触れたんではなかろうか、というお話です。
この写真がなんだか分かりますか?
これは2月の終わりに、
日頃より御世話になっている型枠大工さんに社員研修の講師として(図々しくも!)ご協力いただいた際に、
御厚意で作ってきていただいた型枠のモックアップです。
ただの実物大、現場でよく見るアレ、つまり模型でしょ云々と言うのは易すぎる。
このモックアップは、見方を変えれば柱の型枠にも梁型枠にもなるというのに留まらず、
伝えよう、教えようとする大工さんの工夫とアイデアが、あふれんばかりに満ち満ちとしています。
講師役を快諾してくださっただけでなく、
「セパとか、、持ってきて貰えませんか?」などという不躾なお願い(図々しくも!)を聞いてくださっただけでなく、
どのように伝えるか、どうしたら伝わるか、
それこそに頭をひねって、趣向を凝らしてくれたモックアップには、
大工さんの心がありありと見えるような気がしました。
私たちは日頃せっせと図面を描いています。
検討に打合せにチェックや修正を繰り返し、ようやくたどり着いた最終図には達成感もあるでしょう。
それでももう一度、図面が巣立つ前に問いかけたい。
やれ納まりだ、やれコミュニケーションだ、それこそ時代はBIMだの何のと言いますけれど、
この図面を見るであろう相手のために心ひとつ。
見るひとの目線に寄って、気遣いひとつをほんの僅かでも。
ものづくりの原点にして最も大切なそのことを声もなく語るような、
万感のモックアップなのでした。
最後に、このモックアップ製作にあたって描かれた大工さんのスケッチを載せておきます。
恰好つけて色々と文章を綴りはしてみたものの、これらを見ればなんだか語るも恐れ多いなあという気持ち。
つまるところ、大工さんって凄いね!